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第10号 6/17 2003
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高眼圧症追跡調査でみる緑内障早期視野(Arch Ophthalmol 2003 May)
米国の Ocular Hypertension Treatment Study (OHTS) は、高眼圧症の臨床実態について信頼できる証拠を求めることを目標とした、息の長い前向き臨床研究である.既に、数年以上の追跡で POAG へ移行する事例について中間報告が行われている.この報文では、追跡開始時点では正常だった視野が異常を示すようになった多数の資料を分析している.緑内障初期視野異常の新しいパターン分類を提案し、各パターンの出現頻度を求めている.さらに、視野の検査データの解釈が検者ごとにどれくらい一致したり一致しなかったりするか、同じ検者の解釈の再現性など視野データの読み取りの問題を検討している.
 視野はハンフリー 30-2により、検討開始時はまったく正常の高眼圧症について年2回経時的に定期観察、7年以上の経過中に延べ 38328 回の視野検査を施行、緑内障を主とする異常をきたした事例を検討した.
 1636名(2509眼)でえた視野異常のパターンを検討すると、緑内障に関連した視神経線維(NFB)の異常を反映する視野は、次の7種に分類するのが妥当である.altitudinal: 水平経線上下におよぶ強い異常;arcuate: NFB領域の異常.盲点からつづいて鼻側水平経線に及ぶ;nasal step: 鼻側水平経線近くに限局;paracentral: NFB 領域の小異常、盲点や水平経線から外れる;partial arcuate: NFB 領域の異常、arcuate異常の不全型.盲点と鼻側水平経線とのどちらかに近接;temporal wedge: 盲点よりも耳側の小異常

視野異常が見い出された2509眼の内訳をみると、
緑内障 57.7%(partial arcuate 21.7%;paracentral 15.6%;nasal step10.6%;進行した視野障害7.6%)
緑内障以外の疾病 20.3%;検査の誤り(Testing artifact)9%

視野評価に経験豊かな3名の検者間で、2509 視野の分類判定がどの程度に一致するかを検討した.3名が一致した場合、2名が一致した場合とを合わせると、一致率は 97% であった.同一データを判定した場合の一致率(test-retest reader agreement)は 88% であった.一致率は、水平経線の上下についてほぼ同じだった.
(コメント:高眼圧症の緑内障早期視野異常への移行問題の従来の研究はほぼすべて cross-sectional の検討だったが、OHTS による成績は正常段階から longitudinal に検討して得たものであり、緑内障の早期視野異常を確認したことに価値がある.判定精度は 90%以上であるが、この数値は熟練した検者2人、今回の検討のために計画的に訓練された検者1人によることに留意したい.また、入念な検討によっても、主として被検者の応答に由来するアーチファクトが1割近くあることは、こうしたデータを読み解く場合に留意すべきである.)

滲出性加齢黄斑変性とトリアムシノロン硝子体注射 (Arch Ophthalmol May 2003)
脈絡膜新生血管(CNV)を伴う加齢黄斑変性患者で、トリアムシノロン硝子体内注射の視力低下予防効果について検討したオーストラリアでの ランダム化比較試験
  inclusion criteria: 60 歳以上、classic CNV(中心窩下3.5乳頭径以内)、レーザー光凝固療法を拒否、透光体清明、視力は 0.1 以上、発症から1年以内.exclusion criteria: 他の疾患、副腎皮質ステロイド薬使用、追跡困難、眼底撮影・蛍光眼底造影困難.
 患者を実験群とコントロール群(プラセボ群)とにランダムに割り付けた.実験群: 外来で硝子体内に1回注射.triamsinolone acetate 40 mg/ml (Kenacort 40; Bristol Myers) 0.1 ml.プラセボ群: 最初はプラセボを使わないで計画したが、ほとんどの患者は説明に納得せず拒否したのでプラセボを使用.プラセボ: 生食結膜下注射.triamsinolone注射後によくみられる飛蚊がプラセボ注射後にも起るかもしれないと説明、来院して症状などを質す前に視力その他の検査や効果評価を行うなど盲検化に努めた.3か月、6か月、1年で追跡調査.
 被検者総数:対象は139 例 151 眼.実験群 75 眼、プラセボ群 76 眼.両群間で年齢、性、視力、高眼圧、喫煙歴などに有意差なし.両群のCNVのタイプはほとんどが classic type で、CNV の位置や大きさに有意差なし.
 結果:3か月、6か月で視力悪化度をみると治療効果はなかった.1年後の重度視力低下のリスクは両群で 35% と同じだった.喫煙や高血圧は影響なし.中等度の視力低下のリスクについても3か月と1年で両群に差異はなかった.こうした従前の治験結果と一致しない結果はいくつかの介在因子(実験群での眼圧上昇、白内障発生)には依存しなかった.しかしながら、視機能障害のリスク解消効果はなかったものの、3か月の時点で実験群ではプラセボ群と比べてCNVは縮小あるいは不変の頻度が大きかった(P=0.01).12か月後のCNVの大きさは両群で差はなかった.経過1年までの有害事象として実験群で眼圧上昇がみられた(p<0.001).白内障などの発生は両群で差はなかった.
(こうした検討では、制御困難なバイアスのために本来は有効なのに無効の結果がでることがある、もちろん逆のこともある.この課題は、投与方法などを含めて臨床治験を再度検討する意味があるかもしれない).





原著を読む

Herman Snellen: Test-types for the determination of the acuteness of vision  Utrecht, van de Wever, 1862

『1.一定のサイズの視標が網膜上にできる像の大きさは、眼から見た視標の視角に依存する.それよりも小さな視角では視認できない最小の視角を視力と定義する.
 2.最小視角を求めるには、一定の大きさの視標がようやく視認できた時の眼からの最大の距離を測ればよい.視標の視角は、視標が小さい限りは眼からの距離に反比例するとみなしてかまわない.
 3.視標にはその全体が視角にして5分になる正方形の文字を採用する.文字の字画の幅を文字全体の1/5に等しくする.こうした字画を正常眼では1分の視角で視認することができる.そして、各字画の視角の大きさを文字全体の1/5にすると、その視角は1分になる.たとえば、 C という文字を視角5分の大きさで、切れ目の部分を視角1分にする.
 4.視力表の各種サイズの視標文字の脇に、それが視角5分となる距離(フィート)を印す.文字の切れ目だけでなく文字全体を正確に作成することが大切である.
 5.こうして作成した文字を視認できる最も遠い距離(d)、それが視角5分になる距離(D)から視力(V)は、V = d/D である.d、Dが 20 フィートであれば、V は 20/20 であり、これは正常の視力にほかならない.しかし、d がDよりも大きい、つまり 20 フィートよりも遠方で見えることがある.その場合は正常の標準視力 20/20 よりも良いことになる.
 6.視力は加齢とともに低下する.透光体の透明度が減少して網膜像がぼけたり、認知能が低下したりいするからである.
 7.視力は視標の文字が異なっても等しいのがふつうである.そうではなく、視力値が一定の距離でも著しく変化するのであれば、屈折異常のために距離に合っていないと考えられる.視力が遠方の視標よりも近方の視標で著しく良い場合は近視にちがいない.明視できる最も遠い距離がほぼ近視の程度に一致する.凸レンズによって遠方の視力が増す場合は遠視にちがいない.視力が増す最も強い凸レンズが遠視の程度を表す.(以下、省略)』

Herman Snellen (1834-1908) はオランダ Utrecht 郊外の開業医の息子.Utrecht 大学を卒業、一般外科を研修したが、Donders の研究に興味をもち眼科医を志向した.Donders が1858年に開設した国立眼科病院 (Netherlands Eye Hospital) に研修医として採用され、DondersとSnellenとで眼機能学の歴史を開拓した.視力検査については、 19 世紀初頭からいくつかの方法が提案され実践されていたが、検査の距離をも勘案した視力の段階評価をきちんと定め、屈折検査を補完するような量的視力測定の開発が待たれていた.1862 年からDonders の助言で課題に取り組んだ Snellen は後年、研究を振り返って次ぎのように書いている.『今回の試みは Jaeger's Schriftscalen (1854) とはさまざまな点で異なる.まず、遠見視力を測定するためのもので、さまざまな文字や絵を並べてある.文字や絵は正方形で描いてある.直線の幅、線の間隔の大きさはそれぞれ同じとし、文字全体の大きさの丁度5分の1にした.文字の基本構造は、太さが等しい直線3本を、太さと等しい間隔で平行に描き、、、、、アルファベット文字にはエジプトのparagon type を用いて.....各種サイズの文字について、同じサイズの文字をいくつか並べた.それぞれで視角が5分になる距離(フィートまたはメートル)を文字の脇に印した.こうして、視力 (acuteness of vision, V) は、検査距離 (d) と視角5分でようやく見える距離 (D) との関係から V = d/D である.たとえば、20/200という視力は、患者が20フィートでようやく視認できる視標は正常者が200フィートで見える視標であることを意味している.』

 Donders は屈折光学の研究に専念するために、一般の診療業務のほとんどを Snellen に任せた. 1862年頃には Snellen が事実上の責任者になり、欧州を代表する眼科施設に成長した.Snellen はまもなくBern大学と Leiden大学から招請されたが、ユトレヒトにとどまって1884 年にDonders を継いだ.視力表に加えてred-green test にも名前が残っており、睫毛乱生・睫毛内反・眼瞼内反に対する「スネレン法」は現在も汎用され、白内障術後の「当て金」を工夫したのもSnellenだとされている.  140年前にSnellen が考案した視力測定法は、ほぼそのまま現在まで引き継がれてきた.ただし、欧米では Snellen の原法にしたがって視標の距離を重視した分数視力、我が国では単純な小数視力で表している.

分数視力はともかく、視認最小視角の逆数をそのまま表す小数視力には、その段階が等間隔ではないといった問題があり、たとえば「術後の視力は xx 段階改善した...」といった統計分析ができない.そして、感覚強度の間隔は「Logarithmic scale」で表現されるという心理物理学のルールにあてはめにくい.こうした弱点を克服するために LogMAR 視力という新たな概念による検査が実践されようとしている.

 



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