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第21号 9/30 2004
神経眼科 神経眼科 神経眼科 Neuro-ophthalmology Neuro-ophthalmology Neuro-ophthalmology

神経眼科(neuro-ophthalmology)は、神経内科や脳神経外科など隣接境界分野との接点にあって一定の役割を担っている.論文発表の視点から最近の状況を眺めてみよう.
  米国National Library of Medicineの医学文献データベースMedlineにインターネットでアクセス、Medical Subject Headingsとして「Eye Disease」、subheading termsとして「optic nerve、 visual pathway、 visual cortex、 ocular motility、 pupil」を指定して神経眼科論文を検索した.
  2002年末までの10年間に出版された主要な神経眼科関連論文は9,585件だった.1993年の808件から2002年の1,075件まで発表件数はゆるやかながら増加している.

 1.論文の掲載誌:眼科専門誌に掲載されたのが4,284件で全体の44.7%、神経内科関連雑誌が1,975件(20.6%)と上位を占めた.残りの4割は、内科系臨床科、基礎医学、小児科、脳神経外科、放射線科(画像診断)、耳鼻咽喉科、眼鏡学、認知心理学の専門誌に発表された.

 2.主題と方法:標的となる臓器・組織・部位および疾病・病態を11項目に区分けして、タイトルと抄録から各論文の主題を求めた.主題別ランキングは下図に示すように、眼球運動(外眼筋)、視神経、機能障害、視路/視覚中枢、網膜脈絡膜、眼瞼/眼窩、視交叉部/脳下垂体/海綿静脈洞、全身疾患、脳循環、脳幹/小脳、瞳孔の順である.論文の主題となった疾病の出現頻度ランキング上位20位までを出現度数とともに別表に示す.最も頻度が大きいのは視神経疾患(視神経炎、多発性硬化症、虚血性視神経症、レーベル病)であり、各種斜視や眼振、核上性眼球運動障害、ミトコンドリア脳筋症が続く.

 3.発信国、発信地域:延べ73か国から発信された.米国のシェアが40.6%で断然トップである.5%以上のシェアをもつのは英国10.2%、日本8.7%、ドイツ 6.0% であり、これら最上位4か国で全体の65% を占めている.以下イタリア、カナダ、フランス、オーストラリア、イスラエル、トルコの順に位置する.ランキング上位10位までで全体の81.3%、20位までで94.0% を占める.
  地域別のシェア:北米(米国、カナダ)が43.8%、西ヨーロッパが34.9%、アジアが13.5%、東ヨーロッパが2.9%、オセアニアが2.5%、中南米が1.1%、中東アフリカが0.9%.経年的トレンドとして、北米の相対的シェアが減少してきたのと引き換えにアジア地域がゆるやかに増加する傾向がある.日本や中国や韓国の生産性向上が寄与している.
  神経眼科論文を発信する施設は学際的で多様である.便宜的に11種に分類して集計すると、眼科が40.5%、神経内科が21.7%で、両科が主要な担い手であることを示す.残りの4割ほどは、脳神経外科(麻酔科、救急医学)、基礎医学、放射線医学(画像診断学)、心理学(認知神経科学)、小児科、耳鼻咽喉科など多彩な専門分野が関わっている.世界の傾向と比べて日本の特徴を列挙すると、眼科のシェアは30%と低い、神経内科のシェアは諸外国並みである、脳神経外科や耳鼻咽喉科のシェアが相対的に高い、optometry(眼鏡学、臨床眼光学)は皆無である.

  論文生産実績を施設ごとにみていくと、眼科部門では7位Moorfields Eye Hospital(London)を別格として、トップのJohns Hopkins U (Wilmer Institute) につづいてBascom Palmer、UCLA、Harvard U、Wills Eye、Iowa Uと米国各地の大規模大学病院が上位を独占する.日本では岡山大眼科、千葉大眼科が健闘している.眼科以外の拠点としてはLondon国立神経病院、Harvard大神経内科、Pensylvania大神経内科、Cleveland Clinic神経内科がある.日本からは岡山大耳鼻科や独協大神経内科が上位に入っている.
 筆頭著者としての発表論文数ランキングを調べると、1位は論文40件を発表したLee AG (米国Baylor大眼科)である.10件以上の論文を発表したのは26名であった.
なお、所属をみると欧州や米国ではDepartment of Neuro-ophthalmologyとしてdepartment levelを標榜したのを散見するが、大部分はdivision、 unit、 section、 serviceとしてのneuro-ophthalmologyであってOphthalmologyの付設診療部門であることを物語っている.

Neuro-ophthalmic Diseases in Publications
489 optic neuritis/multiple sclerosis/Devic syndrome
377 strabismus/squint/esotropia/exotropia
303 nystagmus
290 progressive supranuclear palsy
233 mitochondrial encephalopathy, cytopathy, myopathy
229 chronic progressive external ophthalmoplegia
223 glaucoma
207 Leber hereditary optic neuropathy
155 ischemic optic neuropathy
120 Parkinson disease
107 amblyopia
103 toxic optic neuropathy (ethambutol, vaccination)
100 Alzheimer disease
96 dysthyroid ophthalmopathy (Graves, Basedow)
91 Horner syndrome
87 cerebrovascular disease/cerebral infarction
80 Miller Fisher syndrome
70 oculomotor nerve palsy
67 migraine
65 optic nerve glioma  

  4.アジアの躍進:最近10年間にアジアから発表された神経眼科論文は、合計1,297件であった.世界からの発表分の13.5%を占めている.国別には日本が63.3%を占め、残りを中国、韓国、印度、シンガポール、タイの順に分け合っている.近年、韓国やインドからの発信数が顕著に伸びているのは喜ばしい.
  <コメント>神経眼科領域の過去10年の論文発表をみると、神経眼科とその隣接諸分野には新しい課題や問題が次々に発生しており、この専門分野の学際性豊かな役割をはたしていることがわかる.

妙な名称の神経眼科症候群
harlequin syndrome (道化師症候群)
Medlineには29件の論文が収載されている.道化師を想起させる片側顔面の皮膚紅潮と発汗過多とを主徴とする症候群で、非紅潮側の頚部交感神経麻痺による自律神経障害である.眼科との関連では、Horner症候群でharlequin signを呈示した事例やAdie症候群との鑑別に難渋した事例の報告がある.
Alice in Wonderland syndrome (AIWS)
33件の論文が主として小児神経学や精神医学の雑誌に掲載されている.精神科医Toddが1955年の論文でLewis Carrol (1865)の小説『Alice's Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)』にちなんで名付けた症候群.作家Carrolは片頭痛持ちで、自己体験をもとにこの小説を書いたとされる.自分の体の一部や全体が大きくなったり小さくなったり感じる、周囲のものが大きく見えたり小さく見えたり、遠ざかって見えたり近づいて見えたりする、といった症状を訴える.時間感覚の異常を訴えることもある.片頭痛・てんかん・薬物使用(LSD)などが原因疾患として挙がっている.
dancing eye syndrome (DES)
Medlineに16件の報告がある.脳幹と小脳に局在する重い病変によるmyoclonic encephalopathyやopsoclonus-ataxiaに両眼のdancing eyeと表現される不規則な眼球運動を伴う場合である.、原因不明(特発性)のまま緩解する事例もあるが、感染や免疫異常や潜在性神経芽腫(paraneoplastic manifestation)が背景にあって不幸な転帰をとる事例が少なくない.
topless optic disk syndrome
視神経乳頭上部の視神経線維形成不全による視神経乳頭の先天奇形である.下方水平半盲(inferior altitudinal defect)や網膜中心血管の起始部上方変位や乳頭上部欠損をきたす.中心視力は正常である.自覚症状が乏しく,検診でたまたま見つかることがある.正常眼圧緑内障と誤診されて無用の薬物療法が行われることがある.topless optic disk syndromeという名称が使われるのは稀で、通常は正式名称のsuperior segmental optic hypoplasia(SSOH)が使われる

編集後記

来る10月15日(金)から17日(日)まで名古屋国際会議場で『第42回日本神経眼科学会総会』(会長:藤田保健衛生大学神経内科 山本絋子教授)が開催されます.日曜日には「神経眼科講習会」もあります.この学会には創立されてまもなくから参加しており、今回も『論文発表からみた神経眼科学の研究動向』という演題の展示発表をします.今回のECNNLには展示に使う資料の一部を活用しております.神経眼科は、専門的すぎる、診断までで治せない、患者はあまり多くない、といったことから敬遠されがちですが、視野を広くとれば日常茶飲事の『眼精疲労』も実は神経眼科の課題です(大庭 紀雄).

監修:愛知淑徳大学教授  大庭 紀雄  

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