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第2号 7/15 2002
近着最新情報 Archives of Ophthalmology June 2002 

屈折矯正手術の研修医教育について
 Ophthalmology Resident Training in Refractive Surgery, Editorial
 Aaaronn MA, Aaberg TMSr: American Journal of Ophthalmology February 2001
 米国における屈折矯正手術の件数は、1996年には76,000眼、2000年には861,000眼と10倍以上に増し、2005年までにさらに倍増して年間1,962,000眼になるとされている.こうした屈折矯正手術の診療にはこれまでにない側面があるが、既に先進の米国では研修医にいかに教えるかという議論がはじまっている.
 北米とカナダの眼科専門医教育認定施設(大学病院など)149病院を対象として、その教育責任者(教授、部長など)に屈折矯正手術と研修医(医局員)教育についての見解と実態とをアンケートで質問、115施設(77%)から回答があった.
 最初に屈折矯正手術の資格について.広くかつ十分に眼科を研修した眼科医であれば従事する資格がある、とするのが92施設(80%)と圧倒的に多数である.一方、角膜を専門にする眼科医に限るべきである、という考えが18施設(16%)から回答されている.自分が角膜を専門とする回答者(13施設)の見解にはバイアスがかかっているらしく、角膜専門医に限るというのが5件(38%)もあるのは面白い現象である.
 次に、LASIKは眼科の一般研修中に学習すべきかどうか.併行して研修すべきである、というのが88件(76%)と過半数を大きく上回っている.一方、眼科一般の研修後あるいは角膜を専門研修する場合に修練すればよい、という考えが16%と少数派だがみられる.研修プログラムの実際をみると、90施設(78%)で講義、研究室での実習、手術見学などの具体的カリキュラムを実施している.研修内容は時代とともに変遷しており、RKやastigmatic keratectomyが減少したのと反対に、PRKやLASIKが増加している.
 30施設(26%)では、ベテランの指導下でLASIKの実技を習得させている.この場合、各研修医のLASIK実施件数は16施設で5件以下、9施設で6-10件である.
 LASIKの手技習得には研修医のほうが苦労が多いのか、合併症のリスクは研修医のほうが大きいのか、手術成績は研修医もベテランと同じか、といったことは本当のところはデータがなく不明である.ベテランといってもごく最近始めたばかりの術者が多いのだが、アンケートの回答でみる限りでは研修医による術後の成績は良好のようである.
 そもそも、屈折矯正手術の研修教育にはさらにいくつかの問題がある.特別な研修プログラムに必要な物的人的資源や資金をいかに確保するか、研修に必要な患者資源をいかに集めるかといった問題がある.地域住民、大学生、医療従事者などに啓蒙するのが大切とされ、院内に専用電話をおいて患者からの質問に答えている施設が多い.また、今後どんどん多くの研修医が習得してくると、新規参入組と既存の専門家との間に競合が起こることを心配する意見が少なくない.
 コメント:アンケート調査からいろいろと面白いことを知ることができる.屈折矯正手術はきちんと研修した眼科医なら行ってよい、研修中にPRKやLASIKの手技をきちんと習得すべきである、とするのが米国やカナダの大学病院など研修施設の指導者の大多数の意見である.既に多くの施設でさまざまなカリキュラムが実施されてはいるが、指導医の下で実際の症例を用いて実技を研修させているのは、今のところ4分の1にすぎないが、どんどん整備されていく趨勢である.かなり遅れて立ち上がった我が国の屈折矯正手術が北米のように急伸するかどうかは不明であるが、人的物的資源のサイズが小さい我が国の大学病院では、こうした研修プログラムを実施するのはかなり困難ではなかろうか.




Parafoveal telangiectasia, Juxtafoveal retinal telangiectasis 傍中心窩毛細血管拡張症
 黄斑部、中心窩近傍網膜の最小血管が選択的に障害されて、最小血管の閉塞、毛細血管の拡張、毛細血管瘤、小さな出血斑、硬性白斑などをきたす.黄斑部浮腫や網膜病変は黄斑部に限局するのが特徴で、特発性に発生することが多い.
 片眼性であったり両眼性であったり、家族性であったり非家族性であったり、全身疾患を伴わなかったり伴っていたりと病型はさまざまで、いくつかの疾病を背景とする一種の症候群であるとみなされている.
 上側2枚の写真:EyeCare Nagoya (70歳女性)は、 右眼の黄斑部に頑固な浮腫がつづいた.中心窩の上耳側近傍には毛細血管の拡張が顕著で、螢光色素の漏出がみられる.
 下側5枚の写真:5例の傍中心窩毛細血管拡張症を集めてある.


 
 

コーツ病 (Coats病) Coats disease, Peripheral telangiectasis
 網膜の最小血管(毛細血管)が拡張・蛇行するとともに、その透過性がひどく亢進して、網膜内および網膜下に黄白色の滲出物が貯留することを特徴とする疾患である.
 発症年齢から生直後〜乳幼児期にみられる小児型、40歳代以後にみられる成人型に大別されるが、いずれの場合も片眼性罹患がふつうで、原因は不明である。狭義のコーツ病は乳幼児期発症の病型をいう.この疾病のホールマーク、写真に見るように、最小血管の拡張、毛細血管瘤あるいは瘤様変化、動脈瘤様変化、細静脈拡張である.こうした血管病変に関連して、網膜内と網膜下に帯状、線状、輪状、巨大斑状に、黄白色の粘調な滲出物が配列する。滲出病巣のサイズや個数は症例ごとにまちまちである.後極部に現れて、いわゆる「輪状網膜炎」の様相をきたすこともある.滲出物の粘性が低いと、藥物に反応しない頑固な滲出性網膜剥離が広く分布する.


 鑑別診断:小児型で白色瞳孔を示す場合は網膜芽細胞腫、成人型の場合は糖尿病網膜症、Leber粟状血管腫症、von Hippel病なども検討する.
 治療:黄斑部への滲出性網膜、黄斑下増殖などに注意して症例ごとに検討する必要がある.
症例:EyeCare Nagoya (54歳女性)、成人型Coats病.右眼の視力低下を訴えて平成13年4月20日アイケア名古屋を受診.後極部に大きな滲出部と赤道部に滲出性網膜剥離がみられた.蛍光眼底造影検査でコーツ病に特徴的な最小血管の異常が写っている.赤道部に光凝固を加えて経過観察したところ、年末には後極部に滲出性網膜剥離が増強したために視力が指数弁に低下、平成14年1月9日に行った硝子体手術が奏効して網膜剥離は消失した.経時的に検討したOCTの黄斑部の断層画像は、滲出性網膜剥離の消長をとらえている.

 






Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz (1821-1894)
 19世紀後半のドイツの生理学者、物理学者.ポツダムの生まれ.
 Friedlich Wilhelm医科大学を卒業、49年にBonn大学生理学教授、55年にKonigsberg大学生理学教授、58年にHeiderberg大学生理学教授、71年にBerlin大学物理学教授、87年にCharlottenburgの国立物理・工学研究所長を歴任した.彼の研究は生理学から力学にいたる自然科学のほとんど全分野にわたる.1847年に『Uber die Erhaltungder Kraft力の保存について』を発表.力学の基礎的原理、流体力学、電気力学、光学、気象物理学などきわめて多方面への寄与もすこぶる大きかった.さらに哲学においても認識論的省察を展開し、新カント学派の初期を代表する一人でもあった.このようにヘルムホルツの科学者としての特徴は、自然科学のすべての領域にわたってすぐれた理解と独創の力を発揮するという広範な能力にあった.
 医学生理学分野では視覚生理学と聴覚生理学的研究に偉大な足跡を残した.
 「生理光学physiological optics」の体系を樹立、現在も受け入れられている調節の機序や色覚の三原色説を提案した.眼科医によく知られているのは検眼鏡の原理を発見し実用化した業績で、自身は眼科の臨床を行なったことはなかったが、1850年に発表された検眼鏡はGraefeらによって活用され、数年を経ず網膜剥離、緑内障、うっ血乳頭、網膜色素変性など数多くの疾病が発見された。amaurosis(黒内障)というただ一つの眼底病名はまもなく死語になったのである.
 Helmholtzは、Graefeのほか、眼光学のDonders、ボーマン膜のBowman、毛様体筋のBruckeらと親交が深く、19世紀後半の近代眼科学確立の父の一人である.国の内外から数多くの栄誉をうけるとともに、音楽や自然にも造詣が深かった.

 


<編集後記>

台風は揖斐川流域に被害をもたらしましたが、御地ではいかがだったでしょうか.
さて、米国ではレーシックが大きな話題になり、次世代の眼科医へ屈折矯正手術をいかに伝え教えていくかが関心事になっております.技術革新も先人達の努力の上に成り立っていることを認識しておく意味で今号ではHelmholtzにふれました.紙面の制約のため詳しくはできませんが、「眼科学の歴史」というタイトルの出版を計画しておりますので折りにふれてつまみ食いすることにいたします.

大庭 紀雄

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