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第3号 8/24 2002
近着最新情報 Verteporfin Photodynamic Therapy 

Verteporfin を用いたphotodynamic therapy (PDT)による黄斑部網膜下新生血管(CNV)の治療が話題になっている.米国Treatment of Age-Related Macular Degeneration with Photodynamic Therapy group (TAP)による無作為臨床試験あるいは症例研究によって、加齢黄斑変性のみならず特発性CNV、病的近視、ヒストプラズマ眼症、多巣性脈絡膜炎、網膜色素線状などに合併するCNVにも有効であると報じられている.
 Retina 2002; 22: 6-18  TAPが発表したverteporfinを用いたphotodynamic therapyのガイドラインをみると、1)加齢黄斑変性のclassic CNVまたはoccult CNV、2)慣用のレーザー凝固では中心窩まで凝固が及ばざるをえない中心窩中心に近接するCNV、3)進行してQOLのさらなる低下が心配になる事例などが対象である.この場合、CNVの病巣のサイズ、患者の年齢や高血圧の有無、レーザー光凝固の既往は問題にならない.造影検査によってCNV病巣を確認、できるだけ急いで処置して少なくとも二日間、眼部を遮光するとともに皮膚の露出部をおおって光暴露を避ける.
 Am J Ophthalmol 2002 July; 134: 99-101 subfoveal CNVに対するverteporfin PDTの有効性は承認されようとしている.juxtafoveal, extrafoveal CNVについても検討する意味があろう.Juxtafoveal CNV(無血管領域の中心ははずれるが200μm以内のCNV)では中心窩に及んでいなければレーザー光凝固が困難ではないからverteporfin療法の適応はないかもしれない.そうでない事例ではレーザー光凝固のリスクを考えるとこの療法の意味があるだろう.Verteporfin療法の利点とみなされるのは、慣用のレーザー光凝固で起こり得る絶対暗点を回避できそうなこと、レーザー光凝固で病巣に正確かつ強く凝固するのが困難な事例、白内障や固視不良や老年痴呆がある事例、皮内テスト陽性・透光体混濁などのために螢光眼底造影検査でCNV病巣が同定できない事例などは有効であろう.レーザー光凝固とPDTとのどちらかを最初に行なって様子をみて他を追加する、同時に行なう、といった併用療法も検討課題である.
 Am J Ophthalmol 2002 July; 134: 62-68 特発性黄斑下CNVにもverteporfin PDTが有用であることを報じている.8眼(男3例、女5例;平均年齢=34.6歳、範囲25-53歳)にverteporfin PDTを施行.経過観察(平均)13.5か月の最終視力は、改善5眼(62.5%)、不変1眼(12.5%)、悪化2眼(25%).合併症や有害効果はなかった.verteporfin PDTの実際:verteporfin 6mg/(体表面積)を10分かけて静注;静注開始後15分後、ダイオードレーザー(689 nm, 50 J/cm2、強度600mW/m2、サイズはCNV 病巣よりも1000 μmだけ大きい)を83 秒間にわたってCNV病巣に照射.処置後5日間、特別仕様の遮光眼鏡装用、体表の露出部をかくして光暴露を避ける.
 コメント:加齢黄斑変性にみる黄斑部網膜下CNV、subfoveal CNVに対しては、レーザー光凝固に加えて、副腎皮質ステロイド薬投与、黄斑下手術、黄斑移動術、低線量放射線照射、TTT療法、増殖抑制因子投与などさまざまな臨床試験が試みられてきたが、際立って有効な方法はまだ確認されていない.verteporfin PDTの有効性が追試確認されて標準的治療法になるのを期待したい.


ラタノプラストとチモロールの併用による眼圧下降効果は、単剤投与よりも優れている
 Arch Ophthalmol 2002; 120: 915-922 418例の原発開放隅角緑内障、続発開放隅角緑内障、高眼圧症を用いたラタノプラスト単独、チモロール単独、両者併用の眼圧下降効果の無作為二重盲検比較試験.12か月までの経過で、0.05%ラタノプラストと0.5%チモロール併用、一日一回点眼が各単独投与よりも眼圧下降効果が大きい.
 コメント:緑内障患者のコンプライアンス改善に有用な結果である.





EyeCare名古屋における白内障日帰り手術
コメント:老人性白内障のDAY SURGERYが入院手術とまったく遜色なく、 ごく日常的に実践することができる時代を迎えている.自宅との移動もほとんど問題にならなくなった、 といった社会環境の変化も日帰り手術の発達を促しているにちがいない. 留意点は、高齢者が多かれ少なかれかかえるさまざまな全身的リスクにいかに対処するかである. このことは入院手術でも同じである. 筆者が長年勤務した大学病院では、眼科の入院手術で最近5年間に2名の術後死亡(脳卒中、心筋梗塞)という、 従前にはない苦い経験があった.外見では健康そのものに見える高齢者の眼科手術には全身管理の大切さを改めて教えられたものである. 他科の専門医との連携は考えの上では周知のことだが、いざ実践となると緊急時の対処が困難がないとはいえない.
 EyeCare名古屋の現状を紹介すると、最近6か月間に実施された白内障日帰り手術のあらましは次の通りである.
●146件(118名、146眼)、月間平均25件
●年齢、70歳以上が全体の46.5%と半数近くを占めている.最高齢者は93歳.
●すべて予定通り局所麻酔、日帰り手術(翌朝診察)であった.
●術後に眼圧上昇や後発白内障などが一定の割合で発生したが、特記すべき問題はなかった. 高血圧、糖尿病、腎障害(透析中)、歩行困難、難聴などをかかえて介護を必要とする者が多かったが、 手術中および手術後に全身的な問題の発生は一件もなかった.
●患者の居住地はかなり広く分布していた.多くは家人の付き添いを得て、自家用車あるいはタクシーを利用したが、 一部はJR名古屋駅を利用して徒歩で通院したことは特筆に価する.
EyeCare 名古屋においては、ベテラン麻酔科医の永田先生が常勤していて、手術に立ち会ったり隣室で待機したりと万全を期している. こうして、手術に関わるリスク管理は麻酔医に一任、 眼科医は眼部の問題に専念するという体制のもとに理想に近い連携プレーで眼科の手術治療が実践されている.

 
 



歴史上の有名人とMarfan症候群
 結合組織の生成に遺伝的問題があって眼、骨、心臓など様々な臓器や組織に異常をきたす常染色体優性遺伝病としてMarfan症候群がある. 症候群らしく身体各所に各種の先天奇形を多発する事例から、軽いクモ指があるだけで見過ごされる事例まである. とびきり稀な疾病であるとも言えない様である. 知能はむしろ優れているともいわれる.歴史上の有名人物の中にはMarfan症候群を患っていたと思われる人が稀ならずみられる. 最も著名なのは米国の16代大統領Abraham Lincolnであろう. 南北戦争当時はMarfan症候群は知られていなかったのであるが、多くの医学史家による文書調査や家系調査によってMarfan症候群だったことが指摘されている. 最近のアメリカ医師会雑誌に「Lincolnの四肢は体幹と不釣合いに長く、手足の指はクモのようで、皮膚はザラザラしていて、たれ目で斜視があり...」という記事がある. 写真でみるように眼瞼は下垂気味で左眼に上斜視がある. 当時のこととて検査所見は乏しいのであるが、水晶体の偏位はなく、たぶん遠視だが視力は悪くなかったと思われる.

 古代エジプト王Akenhatenやスコットランド王メリーはMarfan症候群であった可能性がある. また、作曲家でピアノの名手Rachmaninoff、バイオリンの鬼才PaganiniもMarfan症候群であったとされている. 彼らはクモの様な長い手指を巧みに使って常人では及ばない能力で楽器を操る事ができたのだろう.
 過日のワールドカップの最中セントルイスカージナルスの現役名投手カイルが心臓病で急死して野球界に衝撃が走ったが、思い起こすのはバレーボールのFlo Hyman選手のことである. ロスオリンピックで米国を優勝に導いた彼女は1986年来日、富山での日本リーグの試合中に急死した. その体形はみるからにMarfan症候群で、剖検によって心奇形が検出され診断が確定したのであった. こうした有名人はいずれも視力に問題はなく、眼科医が目にする水晶体偏位や網膜剥離などをわずらった形跡はない. 各種のプロスポーツをテレビ観戦しているとMarfan症候群を想起させる選手を散見するがどうだろうか.
 余談だが、Osama Bin-LadenはMarfan症候群にちがいないとする妙な記事をみたことがある.風貌や心臓病で寝込んだという噂から出たのだろうが、憶測の域をでない.(大庭紀雄)

 


<編集後記>

暑さの最中ですが、皆様お変わりなくお過ごしのことと思います. 40数年ぶりの名古屋の夏、子供時代を思い出すとクーラーのお陰で本当に楽になりました. 長く過ごした鹿児島の夏は日差しは比べようもなく強烈でしたが、湿度は低く錦江湾からの潮風もあって割と過ごしやすい感じでした. 5月から10月一杯が夏で春秋が短く、冬はけっこう冷え込んで、クーラーと暖房を短い間に切り替えていました. 秋がくるのを楽しみにしております.

大庭 紀雄

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